『ランプ』 川上澄生 著(昭和28年・竜星閣刊・限定1000部)
本書は、詩人・版画家の川上澄生(かわかみすみお)の文と木版集です。そして川上澄生といえば文明開化や南蛮風俗に材をとった多彩な木版画であり、たとえばランプであり洋館であり馬車であり山高帽の紳士が描かれています。ランプの時代を彷彿とさせる文面と情緒を感じさせるランプの版画が満載の洋燈・ランプの世界魅了し、引き込まれる本です。 (初版、昭和15年・アオイ書房刊・限定500部) (昭和52年、東峰書房刊、復刻版500部) 昭和52年にも東峰書房刊より復刻版(初版限定500部)か発刊されている。 また、本書以外にも「洋燈と女」(昭和40年・手彩色入墨摺木版画・限定50部)がある。
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夕方近い街には点燈夫の先駆のやうに街燈や軒燈を掃除して歩く役の人があった。いでたちは点燈夫も同じこと、半ズボンに脚絆をはいて草履がけで必ず鍔のぐにやぐにやに垂れ下がつた古い中折帽を被り薄汚れた手拭を首に巻いて居る。そして脚立を肩にかけ、ひたひたと走り、街燈や軒燈のところで適当に脚立を拡げ或いはそのまま立てかける。それから幾足か脚立に登つて街燈や軒燈の中から洋燈を取り出す。馴れた手つきで火筒の中を油染みた布でえぐるやうに拭き、石油の足りない油壷には石油を満たし、洋燈の心をちよっとひねり、急いで脚立から下り、又脚立を担いで次の場所に駆けて行く。点燈夫はそれから来るのである。手提げ洋燈を持ってやはり脚立を担いでやって来る。針金の曲がった先につして居るのは艦楼切れに洋燈の火を移し、街燈や軒燈の中の洋燈の火筒の中に差し入れる。すると心が適当に出て居る洋燈は一時に花を開くやうに明るくなる。そして艦楼切れの火を吹き消すかと思うと、脚立から下りて又脚立を担いで先を急いで行く。横丁や路地から煮炊きの煙や匂いをなびかせると子供たちは急に里心がついて「あばよ、芝よ、金杉よ」とか「カエルがなくから帰ろ」とかお定まりの文句を口にして「人さらい」が恐ろしくなる。「人さらい」は夕もやに乗じてやつて来て子供をさらふのだ。だんだん暗くなると、家々に洋燈がともり街燈や軒燈は輝きを増して来る。
【あかり】
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「川村驥山扇 揮毫」